山崎社長のコト語り。
おかげさまで「静岡県住まいの文化賞」受賞10回。静岡に山崎工務店あり、と名だたる設計士の皆様から嬉しい評価をいただいている。いわば、手間をかけすぎる工務店。その歴史、そのこだわり、その心意気、社長山崎晏男がとことん語らせていただきます。
設計士と組んで家を建てる。今では当たり前のことになっていますが、静岡ではホントの先駆けでした。もともとは、明治生まれのイッコクな親父が始めた大工職。私が親父と一緒にやり始めたのが、工業高校建築科を卒業してすぐの昭和27年。当時は設計士と組んで仕事をする大工はほとんどいなかったはずです。大工さんが現場に来て、ベニヤ板に図面をちゃちゃっと書いて、それで家が建ってしまう、そういう時代でした。ところが、親父は設計士と一緒に話し合いながら仕事をするのが好きだったんですね。私は何にもわかっていませんでしたから、設計士が入らなければもっと利益が出たのにと、親父を怨んだこともありました。でも、その頃の設計士との付き合いが、こうして今につながっている。これまで一緒に仕事した設計士さんたちが、山崎工務店なら出来る、って仕事をまわしてくださる。現在、20数名の設計士と提携しています。彼らの独創的な住宅を施工できるという技術に加えて、設計士に対して工務店の立場から提案やアドバイスが出来るということが信頼につながっているのだと思います。設計士の仕事はやっぱり一筋縄ではないし、今の若手の設計士なら前衛的な図面もあります。それがまた大変勉強になっていますね。そういう道筋を付けてくれた親父に本当に感謝していますし、また今、こうして息子と一緒に仕事が出来ていることは嬉しいことです。
山崎社長は先代の写真を手帳に挟んでいつも持ち歩いている。
現場に出れば個人と個人。建築の仕事というのはクレームの塊のような側面があります。大手のメーカーさんは、もちろん仕事はちゃんとやっていらっしゃる。しかし、仕事は現場に出れば、個人と個人の間のこと。その人間が転勤や独立で会社から離れることもありますね。そうすると、書類は残っているけれど、人間はいないということになってしまう。数年、十数年経って、手直しや改修があっても手がけた大工が関わることができない、つまり、責任を持てなくなってしまいます。ところが、跡継ぎがいる工務店なら、メンテナンスをちゃんと次の代が引き継いでいけます。当社の場合息子が一緒にやってくれているので、それが何より助けになっていますよ。建てた後、何年も何十年も後の面倒はどうなんだろうと、実は最近そういうことを心配するお客が増えています。建てればお終い、では困ります。そう考えるのは当たり前のことでしょう。
仕事へのこだわり。これは一口ではなかなか言えません。本来、大工の仕事は、普通に当たり前のことをやっていればいい家が出来るはずです。特別なことをしなくても。ただ、現場に出たときに、設計士の注文に対して、自分はこういう方法がいいと思うが、という提案出来るかどうかは大事なことです。設計士もいい家を造りたい思いは同じ。山に登るのにいくつもの道があるように、設計士のこうしたいという図面を形にするために、代案や提案をする。大工も左官も、下職の人たちは、知恵の塊ですからね。そういう職人の声に耳を傾ける設計がいて、期待に応えようとする職人がいて、初めていい仕事が出来ます。カンナできれいに柱を削れるという程度の話は、基本ですし、大工なら当然出来なければ困ります。それにプラス、仕事に対する愛情といいますか、人柄、それが必要なんですね。いい人だね、あの人は、と言われる人間がいいんです。職人が楽しんでやれる現場でなければ、現場があたたかい雰囲気でなければ、やはりいい家は出来ません。いろんな工務店がありますが、下職がころころ変わる工務店は、雇い主・職人のどちらに原因があるにしても、本当にいい家を造ることは出来ないんじゃないかと思います。それほど、家というものは、関わる人間たちのいい思いが集まって、初めていい家になるということです。
古民家再生は面白い。設計士との縁があって関わり始めましたが、お金にならないからという理由でしょうか、他のところはあまりやりたがりませんね。再生するから解体屋に頼むわけにいきません。瓦や土をおろすだけでも、もう大変です。土や埃がものすごい量ですし、一人や二人では出来ません。10人から15人くらい集めてかかって3日間はゆうに費やします。ただ、古いものを生かそうというのは、今の時代、とくに大事なこと。これからもっと増えてくるだろうと思いますね。惚れ惚れするようないい木をたっぷり使っていたり、木組みに当時の大工の技術を見せつけられたり、そういう事も勉強になります。現場へは下職の人たちが何回も通って下見をして、それぞれの意見を言ってくれますし、設計士も、その都度職人に、こういうことは出来ないか、こうしたらどうか、と相談のボールを投げてきます。手間のことだけ考えたら大変ですが、やはりこうして丁寧に直していくのはやりがいのある仕事です。それをまた見てくれている人がいて、次の仕事につながるのだからという張り合いと、何よりも、こういう仕事をやりたいという強い思いがあります。